睡眠時無呼吸症候群と心臓病─夜の呼吸トラブルが“沈黙のリスク”を生む理由

眠っている間、心臓は本当に休めているのか?

私たちの日常は、どれほど忙しかったとしても、眠っている間だけは心臓も体も「休息モード」に入っている—そう考えがちです。
しかし、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)を抱える人にとって、夜の時間はむしろ心臓にとって最も過酷な時間になっていることがあります。

患者の会で相談を受ける多くの方が口を揃えてこう話します。

「朝起きると胸がドキドキする」
「夜中に苦しくて目が覚める」
「心臓が弱っている気がするけれど、原因がわからなかった」

実はその背景には、眠っている時の“呼吸の乱れ”が深く影響しています。
SASは単なるいびきではなく、心臓病と密接に関連する医学的疾患です。
本稿では、その関係を一般の方にも理解しやすい形で丁寧に紐解きます。

睡眠時無呼吸症候群が心臓病を引き起こす4つのメカニズム

SASが心臓に悪影響を及ぼす理由は1つではありません。
複合的なストレスが重なり合い、心臓が本来の休息を得られない状態が続くことで、様々な疾患の土壌を作ります。

ここでは医療現場でも重要視されている「4つの要因」をわかりやすく説明します。

① 無呼吸 → 高血圧 → 動脈硬化 → 心臓病の負の連鎖

無呼吸に陥ると、血中の酸素濃度(SpO₂)が急降下します。
これは体にとって“重大な危機”を意味するため、自律神経が反応し、血圧を一気に押し上げます。

これが一晩に何十回も繰り返されるのがSASです。

・ 繰り返す血圧の急上昇 → 血管の壁が傷つく
・ 傷ついた血管 → 動脈硬化が進む
・ 結果として → 心臓病の発症リスクが上昇

高血圧は“沈黙の殺人者”と呼ばれますが、SASはその裏で血圧を悪化させる隠れた要因とされます。

② 夜中に心拍数が急上昇—心臓は“激しい運動中”と同じ状態に

無呼吸で酸素が足りなくなると、心臓は「もっと酸素を送らなければ」と働きを強め、心拍数を急激に上げます。本来、眠っている間は心拍数が低下し、心臓が休むはず。
しかしSASではその真逆で、睡眠中ずっと“全力疾走”のような負荷がかかり続けます。

これが長年続くと、

・ 心臓の筋肉が疲弊
・ 心機能低下
・ 心不全リスクの上昇

につながります。

感覚的に気づきにくい心臓への負担

多くの患者さんは、夜間の心拍数変化に気づきません。
しかし、翌朝の倦怠感・動悸・不調は、そのサインである可能性があります。

③ 酸化ストレスによる血管ダメージ

無呼吸で酸素が下がり、呼吸再開で酸素が急増する。
この急激な変化こそが、体内に強烈な酸化ストレス(細胞のサビつき)をもたらします。

酸化ストレスは次のような悪影響を与えます。

・ 血管内皮を傷つける
・ プラーク(脂質の塊)形成を促進
・ 動脈硬化の進行を早める
・ 血栓ができやすくなる

こうした変化は、狭心症・心筋梗塞の背景として非常に重大です。

④ 自律神経(交感神経)の過剰刺激

無呼吸のたびに脳が「窒息の危険」と判断し、交感神経が一気に活性化します。
交感神経は、

・ 血圧を上げる
・ 心拍数を上げる
・ 血管を収縮させる

という“活動モード”に体を切り替える役割があります。
しかし睡眠中にこの刺激が繰り返されると、心臓は休む間がなく慢性的なストレス状態になります。

これは、夜中に何度も“危険だ!”と体が勘違いしているようなもの。
この状態が続けば、心臓病が起きやすくなるのは当然です。

睡眠時無呼吸症候群と不整脈—夜の酸欠が心臓のリズムを乱す

不整脈は、心臓の電気信号が乱れることで起こり、脈が飛んだり早くなったり遅くなったりします。
SASと不整脈の相関性は非常に強く、およそ50%の患者に何らかの不整脈が見られたという報告もあります。
とくに注意すべきは、

・ 心房細動(脳梗塞の原因に)
・ 心室性頻拍(突然死のリスク)

などの重篤な不整脈が増えることです。

なぜSASで不整脈が増えるのか?

主な原因は次の3つです。

① 無呼吸による低酸素

心臓の電気活動が不安定になり、リズムが乱れる。

② 呼吸再開時の急激な変化

酸素と血圧の急変動が、心臓に電気的ストレスを与える。

③ 自律神経の乱れ

交感神経が夜中に何度も刺激され、心臓に“誤作動”が起きやすくなる。

狭心症・心筋梗塞との関連——SAS患者は2〜3倍リスクが高い理由

動脈硬化が進行すると、心臓を栄養する冠状動脈という血管が狭くなり、狭心症心筋梗塞が起こります。SASがあると、酸化ストレス・高血圧・自律神経の乱れが重なって動脈硬化が進み、これらの疾患が起こりやすくなると考えられています。

狭心症とは

・ 血管が部分的に狭くなる
・ 胸が締め付けられるような痛み
・ 数分〜15分程度で改善することが多い

心筋梗塞とは

・ 血管が完全に詰まる
・ 激しい胸痛が長時間続く
・ 命に関わる危険もある

SAS患者のリスク

医学データでは、

・ 狭心症・心筋梗塞のリスク:2〜3倍
・ 不整脈のリスク:2〜4倍

とされています。

心不全と中枢性無呼吸—“悪循環を断つ”ために必要なこと

心不全とは、心臓が十分な血液を送り出せなくなる状態です。
心不全が進行すると、脳の呼吸中枢に影響し、中枢性無呼吸を引き起こすことがあります。

一方で、SAS(特に閉塞性)は心臓にさらに負担をかけ、心不全を悪化させます。
つまり、心不全 → 無呼吸の悪化 → 心不全のさらなる悪化という悪循環が成立してしまいます。

CPAPによる改善

SASを治療すると、

・ 夜間の酸素低下が改善
・ 心臓の負担が軽減
・ 心不全症状が和らぐ
・ それに伴って中枢性無呼吸も改善

という好循環が生まれます。

なぜ今、“早めの検査”が必要なのか

多くの患者さんは、心臓の不調を感じていても、睡眠との関係に気づきません。
しかし、睡眠中の呼吸障害は日中には見えにくく、本人も家族も長く気づかないことが多いのです。
もし以下の兆候があれば、放置することは非常に危険です。

・ いびきが大きくなった
・ 呼吸が止まっていると指摘された
・ 朝の頭痛・倦怠感が続く
・ 夜中に何度も目が覚める
・ 脈が乱れることがある
・ 高血圧が改善しない
・ 心臓病の既往がある

SASは、検査すれば確実に “ある・ない” が分かる病気です。
そして、もしSASでなかったとしても、睡眠の不安を取り除くだけでも心身の安心につながります。

患者の会からのメッセージ

睡眠時無呼吸症候群は、「寝ていれば治る」といった病気ではありません。
むしろ、夜の間に進行し、心臓病のリスクを静かに積み上げていく病気です。

しかし朗報があります。
SASは、早期発見し、適切な治療を受ければ、心臓病リスクを確実に下げられる病気でもあります。

患者の会では、

・ 相談できる環境
・ 検査や治療の知識
・ 実際の患者の経験談

などを発信し、安心して治療に向き合えるサポートを行っています。

あなたの睡眠は、あなたの心臓・脳・人生を守る大切な時間です。
どうか後回しにせず、今できる一歩を踏み出してください。

私たち「睡眠時無呼吸症候群に打ち克つための患者の会」では、同じ悩みを抱える方々が安心して相談できる場所を提供しています。

最新のCPAPも無料体験可能ですので、気になる方は是非ご相談ください。

詳しくは以下をご覧ください。

無呼吸&いびき相談室

無料でSASの相談や、CPAPの体験ができます


本記事は、医学的アドバイスや診断を目的とするものではなく、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。記事内容に基づく判断や行動について、当会では一切の責任を負いかねます。健康に関わる重要な判断は、必ず医療機関にご相談ください。

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