睡眠の質の低下がもたらす問題。女性における睡眠時無呼吸症候群(OSA)増加が顕著に

女性における睡眠時無呼吸症候群(OSA)の相対的増加が顕著であるというエビデンス

結論の要点

・ 本研究では 2050年までに女性のOSA患者数が約65%増加すると推定されている
・ 男性の増加率(約19%)と比較すると、女性の相対的増加は3倍以上
・ これは「女性の方がOSAになりやすくなる」という単純な話ではなく、人口構造・肥満動向・ホルモン変化・診断ギャップが複合的に影響した結果である

論文が示した「男女別の将来予測データ」

本研究(2025年、The Lancet Respiratory Medicine 掲載)は、年齢(30–69歳)・性別・BMI分布を組み込んだ前向き数理モデルを用いて、OSAの将来負荷を推計しています。その結果、以下の傾向が示されました。

男女別・OSA有病者数の増加率(2020 → 2050)

性別 患者数の相対増加
男性 +19.3%
女性 +65.4%


女性の増加率は男性の約3.4倍

これは論文中でも特に注目すべき点として扱われており、単なる人口増加では説明できない「構造的変化」が背景にあると示唆されています。

なぜ女性の増加率がこれほど大きくなるのか

① 女性人口の「高齢化」の影響が大きい

OSAの発症リスクは 加齢とともに上昇します。
特に女性では、
・ 閉経前:OSA有病率は男性より低い
・ 閉経後:男性との差が急速に縮小、あるいは同等に近づく
という特徴が、過去の疫学研究でも一貫して示されています。

本研究では、
・ 2050年に向けて 中高年女性人口が大きく増加
・ その年齢層が OSA高リスクゾーンに入る
という人口構造の変化が、女性患者数の急増に強く影響するとされています。

② 閉経後のホルモン変化という生理学的エビデンス

エストロゲン・プロゲステロンには、
・ 上気道筋の緊張維持
・ 呼吸中枢の安定化
といった OSAを抑制する方向の作用があることが知られています。

しかし閉経後にはこれらのホルモンが低下し、
・ 上気道虚脱が起こりやすくなる
・ 無呼吸・低呼吸イベントが増加する
結果として OSAリスクが顕在化します。

重要なのは「女性は若年〜中年期にはOSAが“少ない”のではなく、“表面化していない”可能性がある」という点です。

③ 女性の肥満率上昇がOSAリスクを押し上げる

本研究では BMI分布の将来予測も組み込まれています。
・ 肥満(BMI ≥30)は OSA の最大の可変リスク因子
・ 近年、女性の肥満率増加が男性と同等か、それ以上のペースで進行
という点がモデルに反映されています。

特に女性では、
・ 内臓脂肪+頸部脂肪の増加
・ 閉経後の脂肪分布変化
が重なり、OSA発症に不利な身体条件が形成されやすいとされています。

④ これまで「見逃されてきた女性OSA」が表面化する可能性

論文では直接数値化されていませんが、背景要因として重要なのが 診断ギャップです。

女性のOSAは、
・ いびきが目立たない
・ 日中の眠気より「不眠・抑うつ・疲労感」を訴える
・ 更年期障害や精神的ストレスとして処理されやすい
といった理由から、長年にわたり過小診断されてきたと指摘されています。

今後、
・ 認知向上
・ 検査技術の普及
・ 女性特有症状への理解
が進むことで、潜在的患者が統計上“顕在化”する可能性が高いと考えられます。

患者団体としての解釈

本研究が示しているのは、
見えにくかった女性のOSAが、高齢化・肥満・生理学的変化・診断改善によって可視化される
・ その結果として 相対的な増加率が非常に大きく見える
という構造的問題だと考えます。

女性の睡眠時無呼吸症候群は「例外的な疾患」ではありません。実際に日本においても、多くの女性が悩まれており、患者の会の体験会に女性が参加されるケースも珍しくありません。

むしろ、これまで見過ごされやすかったがゆえに、今後最も注意すべき対象のひとつであることが、最新研究から明らかになっています。

特に、
・ 40代後半以降の女性
・ 更年期以降に「眠りが浅くなった」「疲れが取れない」と感じている方
に対して、積極的な啓発と検査の機会提供が必要ではないかと感じます

・この論文全体の解説についてはこちらをご覧ください。
・国内の情報を補足した女性向けの記事はこちらをご覧ください。

参考文献

Boers E, Barrett MA, Benjafield AV, et al. Projecting the 30-year burden of obstructive sleep apnoea in the USA: a prospective modelling study.
The Lancet Respiratory Medicine, Volume 13, Issue 12, 2025.

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本記事は、医学的アドバイスや診断を目的とするものではなく、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。記事内容に基づく判断や行動について、当会では一切の責任を負いかねます。健康に関わる重要な判断は、必ず医療機関にご相談ください。

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