睡眠の質の低下・・・最新研究が示す原因と見逃されやすい健康リスク

睡眠の質が低い人は、なぜこれほど多いのか
最新研究が示す原因と、見逃されやすい健康リスク
「寝ている時間は足りているはずなのに、疲れが取れない」
「朝からだるさが残り、日中に眠気が強い」
「年齢やストレスのせいだと思っているが、改善しない」
こうした悩みを抱えている人は、決して少数ではありません。
世界的に見ても“睡眠の質が低い成人”は非常に多いことが、最新の研究から明らかになっています。
2026年1月、国際的な睡眠研究誌、『Nature and Science of Sleep(NSS)』に「カタールの成人における睡眠の質の低さの有病率および関連要因:横断的研究」が掲載されました。(論文の要約は当記事の下段にあります)
睡眠の質の低下は“一部の人の問題”ではない
この研究は特定の病気に限定せず、成人人口全体の睡眠の質と生活要因の関係を調べたものですが、成人人口の6割以上が「睡眠の質が低い状態」にあるという、非常に衝撃的な結果が報告されました。
私たち患者の会は、このデータを「遠い国の話」「特殊な環境の結果」として片づけるべきではないと考えています。そこで示された要因の多くは、日本の現代社会に共通する生活環境や健康課題です。
以下、その論文をもとに、睡眠の質の問題を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
研究が示した事実:睡眠の質が低い人は「多数派」
この研究は、中東カタールの成人人口を対象に、睡眠の質と生活習慣・健康状態との関係を調べた横断研究です。その結果、次のような事実が示されました。
・ 成人の62.6%が「睡眠の質が低い」状態
・ 睡眠の質の低下は、一部の人だけの問題ではない
・ 生活習慣や慢性疾患、ストレスと密接に関係している
重要なのは、この研究が不眠症や睡眠時無呼吸症候群など、特定の病気に限定していない点です。
つまり、
「診断がついていない人」
「自分は病気ではないと思っている人」
も含めて、社会全体で睡眠の質が低下していることを示しています。
睡眠の質を低下させる主な要因とは
研究では、睡眠の質の低さと有意に関連する要因として、次の4つが挙げられました。
1. 身体活動の不足(運動不足)
日常的に身体を動かす習慣が少ない人ほど、睡眠の質が低い傾向が明確に示されました。
適度な運動は、
・ 入眠を促す
・ 深い睡眠を増やす
・ 睡眠リズムを整える
といった効果があることが知られています。
一方、長時間の座位生活や運動不足は「眠れない」「眠りが浅い」などの問題を招きやすくなります。
2. カフェインの過剰摂取
日中のカフェイン摂取量が多い人ほど、睡眠の質が低下していました。
コーヒーやエナジードリンク、緑茶などは、一時的に眠気を抑えますが、
・ 覚醒状態が夜まで持続する
・ 深い睡眠が減少する
といった影響を及ぼすことがあります。
「眠いからカフェインを摂る」→「夜の睡眠の質が下がる」→「さらに日中眠くなる」という悪循環は、睡眠の質低下を慢性化させる一因です。
3. 慢性疾患を持っていること
高血圧、糖尿病、心疾患など、何らかの慢性疾患を抱えている人では、睡眠の質が低い割合が高くなっていました。
慢性疾患は、
・ 夜間の身体的不快感
・ 薬剤の影響
・ 自律神経の乱れ
などを通じて、睡眠に影響を与えます。
また逆に、睡眠の質の低下が慢性疾患を悪化させるという双方向の関係も指摘されています。
4. 高いストレスレベル
心理的ストレスは、睡眠の質に最も強く影響する要因の一つです。
・ 寝つきが悪い
・ 夜中に目が覚める
・ 朝早く目覚めてしまう
といった症状は、ストレスと密接に関係しています。
研究では、ストレスレベルが高い人ほど、睡眠の満足度が低いことが明確に示されました。
この研究が示す「本質的な問題」
この論文が示しているのは、単なる生活習慣の問題ではありません。
睡眠の質の低下は、
・ 罹患率の上昇
・ 生活の質(QOL)の低下
・ 心身の健康リスクの増大
と結びつく、公衆衛生上の重要課題であるという点です。
そしてここで、私たち患者の会として強調したい視点があります。
睡眠の質が低い背景に、見逃されやすい要因
この研究はSAS(睡眠時無呼吸症候群)に特化したものではありません。
しかし、SASの主症状そのものが「睡眠の質の低下」です。
SASでは、
・ 睡眠中に呼吸が止まる
・ 酸素が不足する
・ 脳が何度も覚醒する
という状態が繰り返されます。
その結果、
・ 深い睡眠が確保できない
・ 睡眠が断片化する
・ 本人は「眠っているつもり」でも回復しない
という状態に陥ります。
研究で示された「運動不足」「慢性疾患」「高ストレス」といった要因は、SASのリスク因子・併存因子とも重なります。
つまり、睡眠の質が低い→生活習慣やストレスのせいだと思っている→実は、呼吸の問題が関与しているケースもある、という構図が決して珍しくないのです。
「眠れていないこと」に慣れてしまう危険性
睡眠の質の低下は、ゆっくり進行します。
・ 少し眠気が強い
・ 少し疲れやすい
・ 少し集中力が落ちた
こうした変化は、「年齢のせい」「忙しいから仕方ない」として見過ごされがちです。
しかし、研究が示すように、睡眠の質が低い状態が多数派になっている社会では、不調が“当たり前”として受け入れられてしまいます。
患者の会として伝えたいこと
この研究は、「特定の病気の話」ではなく、社会全体の睡眠の質が低下している現実を示しています。
そしてその中には、
・ 生活習慣だけでは説明できないケース
・ 慢性疾患やストレスだけでは片づけられないケース
が確実に含まれています。
睡眠の質の低下が続いている場合、その背景を一度立ち止まって考えることが重要です。
それは、自分を責めるためではなく、守るためです。
睡眠の質は「軽視してはいけない健康指標」
・ 睡眠の質が低い人は、決して少数ではない
・ 生活習慣・ストレス・慢性疾患と密接に関係している
・ 睡眠の質低下は、日中の生活や健康リスクに直結する
・ 背景に、見逃されやすい要因が隠れている場合もある
「眠れていないこと」に慣れてしまう前に、一度、自分の睡眠を見直してみることが、将来の健康を守る第一歩になるかもしれません。
「眠れていない状態」に慣れてしまう前に
睡眠の質の低下は、ある日突然ではなく、ゆっくり進むことがあります。
そのため「年齢のせい」「忙しいから仕方ない」として受け入れてしまい、本来なら改善できたはずの不調を長く抱えてしまうケースが少なくありません。
私たち患者の会には、「もっと早く気づいていればよかった」という声が数多く寄せられます。
それは、“気合い”が足りなかったからではなく、睡眠の問題が見えにくい構造があるからです。
まずは睡眠の質を、体調管理の重要な指標として捉えることから始めてみてください。
「睡眠時無呼吸症候群に打ち克つための患者の会」では
同じ悩みを抱える方々が安心して相談できる場所を提供しています。
最新のCPAPも無料体験可能ですので、気になる方は是非ご相談ください。
詳しくは以下をご覧ください。
2026年1月19日に学術誌『Nature and Science of Sleep (NSS)』に掲載された論文「カタールの成人における睡眠の質の低さの有病率および関連要因:横断的研究(Prevalence and Associated Factors of Poor Sleep Quality Among Adults in Qatar: A Cross-Sectional Study)」の要約は以下の通りです。【背景と目的】睡眠の質の低下は、公衆衛生上の重大な懸念事項であり、罹患率や死亡率、生活の質の低下と密接に関連しています。本研究は、カタールの成人人口における睡眠の質の低さの割合(有病率)を調査し、それに関連する要因を特定することを目的としました。
【主な結果】・ 睡眠の質の低さの割合: 調査対象となったカタールの成人のうち、62.6%という非常に高い割合で睡眠の質が低いことが判明しました。
・ 関連する要因(リスク要因): 以下の要因が、睡眠の質の低さと有意に関連していることが特定されました。
- 身体活動の不足: 運動不足は睡眠の質を悪化させる主要な要因。
- カフェインの過剰摂取: 日中の多量なカフェイン摂取が睡眠を妨げている。
- 慢性疾患: すでに何らかの持病(慢性疾患)を持っている人は、睡眠の質が低い傾向。
- 高いストレスレベル: 心理的なストレスが睡眠の深さや満足度に悪影響を与えていた。【結論】
カタールの成人において睡眠の質の低下は極めて一般的であり、公衆衛生上の介入が急務です。身体活動の促進、カフェイン摂取の管理、ストレス軽減プログラムなどの戦略が、国民の睡眠の質を向上させるために必要であると結論付けられています。
論文原典:https://www.dovepress.com/prevalence-and-associated-factors-of-poor-sleep-quality-among-adults-i-peer-reviewed-fulltext-article-NSS
※ 本記事は、医学的アドバイスや診断を目的とするものではなく、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。記事内容に基づく判断や行動について、当会では一切の責任を負いかねます。健康に関わる重要な判断は、必ず医療機関にご相談ください。
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