いびきのメカニズム─その背後に潜む「上気道の変化」と睡眠時無呼吸症候群のリスク

いびきは「音」ではなく「SOS」かもしれません
「疲れているだけだと思っていた」
「昔からの癖だろう」
いびきをそう捉える人は多くいます。しかし、いびきは単なる生活習慣の問題ではなく、気道(上気道)の変化を知らせる身体からの重要なサインです。
そして、慢性的ないびきは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の入り口であることが少なくありません。
患者の会には、「いびきは家族に迷惑だから…」という相談が多く届きますが、実際には、いびきが生じている本人の健康こそが深刻な影響を受けているケースが多々あります。
本稿では、いびきが発生する科学的メカニズムから、なぜ中高年男性に多いのか、そして早期の検査がなぜ重要なのかを、専門知識を分かりやすく噛み砕いて解説します。
いびきの仕組み—なぜ眠っているだけで音が鳴るのか
いびきとは、睡眠中の呼吸によって生じる「気道の振動音」です。
空気の通り道である**上気道(鼻・咽頭・喉・気管の入口付近)**が狭くなることで、空気の流速が上がり、その結果、粘膜が振動して音が鳴ります。
特に、上気道の中でも
・ 軟口蓋(なんこうがい)
・ 口蓋垂(いわゆる“のどちんこ”)
は非常に振動しやすく、いびきの大半はこの部分が原因だと言われています。
空気が通る量は同じでも、通り道が狭ければ音が大きくなる
これは、水道ホースの口を手で狭めると、水の勢いが強くなり音が変わるのと同じ原理です。
上気道が狭くなる要因
・ 肥満(首まわり・喉の内側の脂肪増加)
・ 鼻づまり
・ 扁桃肥大、口蓋形状などの解剖学的特徴
・ 寝る姿勢(仰向け)
・ 飲酒習慣
・ 年齢に伴う筋力低下
つまり、いびきとは「気道狭窄(きょうさく)」が音として表に現れた状態なのです。
上気道が狭い人ほど要注意—いびきは無呼吸の“入口”
慢性的にいびきをかく人は、何らかの理由でにあります。
その狭さが睡眠中にさらに悪化すると、上気道が完全に塞がり、無呼吸が起こります。
普段いびきがない人でも、条件が揃うと発生する
健常者であっても、
・ 風邪で喉が腫れた
・ 花粉症で鼻が詰まった
・ 寝る前に飲酒した
・ 一日中疲れていた
といった状況では上気道がより狭くなり、一時的にいびきをかくことがあります。
なぜ睡眠中はいびきが出やすいのか
睡眠時には、以下の要因で気道がより狭くなりやすいからです。
・ 筋肉が弛緩し、舌根(舌の付け根)が落ち込みやすい
・ 仰向け姿勢で下向きの重力がかかる
・ 深い眠りほど筋緊張が低下する
上気道はもともと“細かい凹凸がある構造”のため、わずかな事情でも空気の通りが悪くなり、いびきが発生します。
上気道の閉塞が進むとどうなる?
・ 無呼吸(10秒以上呼吸が止まる)
・ 血中酸素が下がる(SpO₂低下)
・ 心臓・脳に大きな負担
・ 日中の眠気・倦怠感・集中力低下
慢性的ないびきは、「いつ無呼吸が起きてもおかしくない状態」とも言えます。
働き盛りの中高年男性に多い理由
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は年代問わず起こりえますが、特に中高年男性に多いことが特徴です。
その理由は主に以下の通りです。
①加齢による筋力低下と脂肪分布の変化
加齢に伴い、
・ 喉周囲の筋肉が弱くなる
・ 舌根が落ちやすくなる
・ 上気道が狭まりやすい
という身体的変化が起きます。
また、男性は首や上半身に脂肪がつきやすいため、肥満による気道狭窄が起きやすくなります。
②飲酒習慣との関係
働き盛りの生活には、
・ 会食
・ 晩酌
・ ストレスによる飲酒
などが重なりがちです。
アルコールは気道を支えている筋肉を“緩める”作用があるため、いびきや無呼吸を悪化させます。
③忙しさによる「気づかない・放置しがちな」状況
働き盛りほど、以下のような傾向があります。
・ 体調不良を“疲れのせい”と考えてしまう
・ 検査に行く時間を確保しづらい
・ 眠気や集中力低下をストレスと勘違いする
その結果、症状が進んでから初めて健康問題として認識されるケースが非常に多いのです。
我が国の推計=中高年男性の約6割がいびき、300〜500万人がSAS疑い
日本では、
・ 約2,000万人が「いびき」をかくと推定
・ 中高年男性の約6割がいびき経験者
とされ、そのうち300〜500万人にSASの可能性があるとも言われています
しかし、実際に治療を受けている患者数はわずか「20数万人」。
つまり、本来治療が必要な人の多くが診断すら受けていない状態なのです。
早期発見・早期治療の重要性—見逃すと大きなリスクに
ある財団による2012〜2017年度の睡眠検査では、92,355人中、約10%がSASの疑いありという結果が出ています。
・ D判定(SAS疑い)7,273名
・ E判定(重度の呼吸障害疑い)2,133名
特に、年齢が上がるほどSASの割合も増加することが判明しています。
なぜ早期発見が大切なのか?
いびきや無呼吸を放置すると…
身体への負担
・ 高血圧
・ 心臓病(狭心症・心筋梗塞)
・ 脳卒中
・ 糖代謝異常(糖尿病の悪化)
など、長期的な健康リスクが増大します。
日常生活への影響
・ 強い眠気による居眠り運転
・ 判断力の低下
・ 朝からの疲労感
・ 仕事のパフォーマンス低下
「なんとなく疲れが取れない」は、実は酸素不足の合図かもしれません。
検査は負担が少なく、誰でもできる
睡眠時無呼吸の検査は、
・ 自宅で簡易的に行うもの
・ 医療機関で行う精密検査(PSG)
の2種類があります。
特に自宅検査は、指にセンサーをつけて眠るだけで無呼吸の有無が分かるため、初めての方でもハードルが低いです。
「いびきの裏側」を軽視しないでください
いびきは決して“うるさい音”だけの問題ではありません。
それは、上気道の狭窄を知らせる重要なサインであり、睡眠時無呼吸症候群の予備段階であることもしばしばです。
そして、放置すれば心臓・脳・全身に負担が積み重なり、将来の健康リスクが高まります。
もし、以下に当てはまる場合は、早めの検査をお勧めします。
・ いびきを慢性的に指摘される
・ 夜中に呼吸が止まっていると言われた
・ 朝から疲れている
・ 日中の眠気が強い
・ 中高年・肥満・飲酒習慣がある
・ 家族にSASの人がいる
あなたのいびきは、「治療できるサイン」です。
どうか見逃さないでください。
私たち「睡眠時無呼吸症候群に打ち克つための患者の会」では、同じ悩みを抱える方々が安心して相談できる場所を提供しています。
最新のCPAPも無料体験可能ですので、気になる方は是非ご相談ください。
詳しくは以下をご覧ください。
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本記事は、医学的アドバイスや診断を目的とするものではなく、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。記事内容に基づく判断や行動について、当会では一切の責任を負いかねます。健康に関わる重要な判断は、必ず医療機関にご相談ください。
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