その「いびき」、本当に大丈夫ですか? ― 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の基礎知識と、あなたの体に起きていること ―

一般社団法人 睡眠時無呼吸症候群に打ち克つための患者の会


いびきは“ありふれた悩み”であり、“見過ごされやすい病気のサイン”でもあります

いびきは、多くの人が日常生活のなかで「よくあること」として扱われがちです。
「疲れているだけだろう」「お酒を飲んだから仕方ない」「家族からうるさいと言われるけれど、命に関わるわけではない」と、深刻には捉えない人も少なくありません。

しかし、慢性的ないびきは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の予兆である場合があります。
いびきをかく人が必ずSASになるわけではありませんが、反対に、SAS患者には高い確率でいびきがみられます。
つまり「いびきは身体からの注意喚起」であり、決して軽視できないサインなのです。

患者の会には、

  • いびきがずっと続いていた

  • 家族から夜中の「呼吸が止まっていた」と指摘された

  • 朝起きても全く疲れが取れない
    こうした相談が数多く寄せられています。

その多くは、“自分では気付けなかった” という共通点があります。


いびきが起こる“気道の仕組み”

いびきの発生メカニズムを理解するには、まず空気の通り道である 上気道 を知る必要があります。
鼻から咽頭(のどの奥)を通って気管へ至る部分を指し、ここが狭くなることで空気が流れる速さが増し、粘膜が震えて音が生じます。

特に音が出やすいのは、

  • 軟口蓋(のどちんこの周囲の柔らかい部分)

  • 咽頭の壁
    といった組織です。

普段はいびきをかかない人でも、

  • 飲酒

  • 強い疲労

  • 風邪による鼻づまり
    などによって筋肉がゆるみ、一時的に気道が狭くなれば、だれでもいびきをかきます。

つまり 「いびき=異常」ではなく、条件がそろえば誰にでも起きる現象 なのです。

しかし、慢性的ないびきには別の理由が潜んでいます。


慢性的ないびきは「気道が常に狭い状態」を示すサイン

日常的にいびきをかく人では、気道が元々狭くなっていることが多くあります。
その要因には以下のようなものが挙げられます。

  • 首や舌の周囲に脂肪がつきやすい肥満

  • 加齢による筋力低下

  • 下顎が小さい・奥まっているなどの骨格的特長

  • 慢性的な鼻づまり

  • 女性では更年期によるホルモン変化

こうした状態が重なると、睡眠中に気道が完全に閉じてしまうことがあり、これが 無呼吸 の発生につながります。
無呼吸が一晩に何十回、何百回と起きれば、当然ながら体は深く眠れません。

SASはまさにこの「無呼吸と低呼吸」が繰り返される病気です。


SASのいびきに見られる特徴

患者の会で多くの方の相談を受けるなかで、SASが疑われるいびきには一定の傾向があります。

  1. ほぼ毎晩、大きないびきをかく

  2. 睡眠中ずっと続き、とぎれる気配がない

  3. 横向きで寝ると軽くなるが、仰向けだととても大きい

  4. いびきが突然止まり、「シーン」と静寂が訪れる

  5. その後、「ガッ」と息を吸う音がする

この “いびき → 静止 → 息を吸う音” は多くの場合、無呼吸の発生を示しています。
ご家族の指摘で初めて気づくケースも多いポイントです。


いびきの裏で身体に起きていること

無呼吸は、単に「息が止まっている」だけではありません。
体内では、次のような変化が起きています。

  • 血中酸素の低下(低酸素血症)

  • 脳が何度も覚醒する

  • 自律神経が乱れる

  • 心臓や血管への負担が増える

本来、睡眠中は“休息モード”である副交感神経が優位ですが、無呼吸が起きるたびに脳が覚醒し、“戦闘モード”である交感神経が働きます。

その結果として──

  • 夜中に何度も目が覚める

  • 寝汗が増える

  • 夜間のトイレの回数が増える
    など、日常生活に直結する変化が起こります。


朝の不調とSASの関係

SAS患者がよく訴えるのは、「朝からすでに疲れている」 という状態です。

具体的には、

  • 口の乾燥

  • 熟睡感がない

  • 体が重い、だるい

  • 頭痛がする
    といった症状です。

これは、夜間の低酸素状態や、睡眠が何度も中断されることによって起こります。
結果として体がリセットされず、疲労が慢性的に蓄積していきます。


日中の眠気・集中力低下は“最も見逃せないサイン”

SASで最も危険なのは、睡眠不足による日中の強烈な眠気です。

  • 会議中に意識が飛びそうになる

  • パソコン作業中に何度も落ちてしまう

  • 車の運転中にハッと目が覚めた

こうした体験を持つ方は少なくありません。
重大事故にもつながりかねないため、医学的にも非常に重要視されています。

また、SASによる疲労や集中力低下は うつ病や自律神経失調症と診断されてしまうことがあるほど 症状が似ています。
原因が睡眠にあると気づかれず、長年苦しむ人もいます。


SASが“気づかれにくい”理由

SASの最大の問題点は、本人の自覚症状が乏しいこと です。
無呼吸は睡眠中に起きるため、本人は覚えていません。

また、特に働き盛りの男性の場合、
「忙しいから疲れているだけ」
「年齢で体力が落ちた」
と片づけられてしまう傾向があります。

しかし、いびきや眠気を放置すると、次のような重篤な病気を引き起こす可能性があります。

  • 高血圧

  • 心不全

  • 不整脈

  • 脳梗塞

  • 糖尿病の悪化

睡眠は健康の土台であり、その質が崩れるだけで体には大きな負担がかかります。


 SASの潜在患者は300〜500万人

日本で「いびきがある人」は約2,000万人。
そのうち 300〜500万人がSASの可能性がある と推定されています。

しかし実際に治療を受けているのは、そのごく一部にとどまります。

ある大規模なスクリーニングデータでは、

  • 全体の約1割にSAS疑い

  • 高齢になるほど割合が増加
    という結果が明らかになっています。

つまり “気づかれていないSAS” が非常に多い のが現状です。


SASは“早期にわかれば必ず対応できる病気”

SASは、

  • 早期発見

  • 適切な治療
    によって、確実に改善が期待できる病気です。

特にCPAP(シーパップ)療法は世界的にも効果が確立されており、多くの患者が睡眠の質を取り戻しています。

「いびきが続いている」
「日中眠くて仕方ない」
「朝起きると疲れている」
こうした症状を感じる方は、一度検査を受けることで自分の状態を知ることができます。


あなたの眠りは、健康の出発点です

睡眠は、人生の3分の1を占める大切な時間です。
その睡眠が静かに崩れてしまうと、生活のあらゆる場面に影響が出ます。

いびきや眠気は“性格”や “癖”ではありません。
体が発しているSOSの可能性があります。

私たち患者の会は、

  • いびきやSASで悩む方

  • ご家族から指摘され不安を抱える方

  • 検査や治療に不安がある方
    の相談を日々受けています。

誰かに相談することで状況が整理され、重荷が軽くなることもあります。
不安を抱えたままにせず、まずは一度ご自身の睡眠と向き合ってみてください。


患者の会からのメッセージ

私たち「睡眠時無呼吸症候群に打ち克つための患者の会」では、同じ悩みを抱える方々が安心して相談できる場所を提供しています。

最新の小型CPAPも無料体験可能ですので、気になる方は是非ご相談ください。

詳しくは以下をご覧ください。

無呼吸&いびき相談室

無料でSASの相談や、CPAPの体験ができます