いびきの裏に隠れた“重症睡眠時無呼吸”を見逃さないために

1. はじめに
「いびきをかくけれど、無呼吸までは・・・」多くの人がそう思っています。
しかし、“いびきだけ”と思っていた方の中に、実は重症の睡眠時無呼吸症候群(SAS/OSA)が隠れているケースが少なくありません。
2025年に発表された国際研究(Chao ら)は、この問題に新しい角度から光を当てています。
それは、首に貼るだけの小さなセンサーを使い、「単なるいびき」と「重症SAS」を高い精度で区別できた、という内容です。
患者の会としても、非常に重要な示唆を含んだ研究ですので、わかりやすく紹介します。
論文の詳細版はこちらの記事をご覧ください。
2. 国際研究の内容:首の“振動”を使って、いびきと重症SASを判別
Chao ら(2025)は、習慣的ないびき(habitual snoring)を持つ人々 に対して、次の2つを組み合わせた新しい分析方法を試みました。
① 首に装着する「圧電(ピエゾ)センサー」
喉の近く(首)に貼り、いびきの振動、呼吸の動き、気道の振動パターンを微細に拾うことができます。
② 深層学習(ディープラーニング)による解析
センサーが拾った振動データをAIモデルが解析し、「単なるいびき」と「重症の睡眠時無呼吸(SAS)」を見分けられるかを検証しました。
3. 結果:約90%の精度で「重症SAS」を見分けることに成功
研究チームは、90%前後の高精度 で
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習慣的ないびき(habitual snoring)
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重症OSA(AHI ≧ 30)
を識別することに成功しました。
これは何を意味する?
・いびきは音だけでは判断できない“隠れた問題”がある
・振動パターン(気道の揺れ方など)には、重症OSAの特徴が表れる
・家庭でも使えるような簡易センサーが、将来のスクリーニングになる可能性
患者さんにとって、“本当は重症SASなのに『ただのいびき』と思い込んでしまう”という危険を減らす大きな一歩です。
4. なぜ「いびき」と「重症SAS」は区別が難しいのか?
多くの方が、「無呼吸なら気づくはず」「苦しくて起きるからすぐ分かる」と思っています。
しかし、実際には…
● 本人は無呼吸に気づかない
● 家族も気づかない(息が止まる時間が短い)
● 症状が「日中の眠気」など間接的
そのため、“重症SASなのに見逃されている人”がとても多いのが現実です。
今回の研究が示した通り、いびきの振動パターンには、OSA特有の“気道の閉塞サイン”が含まれているのです。
5. 学び:「いびきがある=無呼吸ではない」という思い込みを捨てること
特に、
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大きないびき
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毎晩いびきをかく
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年齢が上がってきた
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肥満傾向
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朝起きても疲れが取れない
という方は、身体がSOSを出している可能性があります。
いびきだけでも“重症SASの可能性”はある
Chao らの研究は、「いびきがあるだけでも、首の振動データから重症SASが隠れていることが分かる」という事実を示しました。
これは、私たち患者の「自分はいびきだけだから大丈夫」という誤解を正す非常に大事なエビデンスです。
6. 患者の会として、この研究から伝えたいこと
この研究によって、いびきと無呼吸を、より正確に区別できる未来が近づいているということはもちろんですが、患者の会として特に伝えたいのは次のポイントです。
① いびきがある人は、必ず一度は検査を
センサー技術が進んでも、最終的には医学的な睡眠検査(PSGや簡易検査)が必要です。
② いびきは“軽症の合図”ではなく、“重症の可能性のサイン”
眠っている間の呼吸状態は、自分ではわかりません。
家族ですら気づかないことも多く、放置すると、高血圧、心臓病、脳血管疾患などのリスクにつながります。
③ 相談できる場所が必要
いびきだけで病院に行くのはハードルが高い、という声をよく聞きます。
私たち一般社団法人「睡眠時無呼吸症候群に打ち克つための患者の会」では、
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いびきや眠気の相談
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CPAPの無料体験
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機器の選び方
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自費購入・レンタル相談
などを「患者目線」で行っています。
安心して話せる場所があることを知ってほしいのです。
7. 患者の会からのメッセージ
私たち「睡眠時無呼吸症候群に打ち克つための患者の会」では、同じ悩みを抱える方々が安心して相談できる場所を提供しています。
最新のCPAPも無料体験可能ですので、気になる方は是非ご相談ください。
詳しくは以下をご覧ください。
無呼吸&いびき相談室

無料でSASの相談や、CPAPの体験ができます
本記事は、学術論文や公開情報を元に、患者さんが理解しやすい形でまとめた一般的な情報提供です。医学的アドバイスや診断を目的とするものではなく、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。記事内容に基づく判断や行動について、当会では一切の責任を負いかねます。健康に関わる重要な判断は、必ず医療機関にご相談ください。


