睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状とは?

日中の不調から将来リスクまで ― CPAP治療につながる基礎知識
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、眠っている間に呼吸が止まったり、弱くなったりする病気です。「いびきが大きい」「日中眠い」というイメージが先行しがちですが、実際には体のあらゆる機能に影響を及ぼす“全身の疾患”です。
しかも本人に自覚がないまま進行するため、気づいた頃には生活や仕事の質、さらには健康リスクが大きく損なわれているケースも珍しくありません。
本記事では、睡眠時無呼吸症候群にみられる代表的な症状を整理しつつ、なぜCPAPを含む適切な治療が大切なのかを、医学的根拠に基づきながら丁寧に解説します。
1. 睡眠時無呼吸症候群とは?
症状を知る前に押さえたい基本メカニズム
睡眠時無呼吸症候群の多くは、上気道(喉)が塞がって空気が通りにくくなる「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」です。
眠って筋肉が緩むことで喉が狭くなり、空気の通り道が確保できなくなると、呼吸が止まります(無呼吸:10秒以上の呼吸停止)。また、酸素が大きく低下する「低呼吸」も繰り返されます。
呼吸が止まるたびに体は「苦しい!」と反応し、脳を浅い睡眠状態に引き戻します。これが一晩に数十回〜数百回も起こるのです。
そのため、どれだけ寝ても熟睡できず、体が常に疲れた状態になります。これがあらゆる症状の出発点です。
2. 主な症状(夜間)
寝ている間に起こる“サイン”を見逃さない
■ ① 大きないびき(特に断続的ないびき)
単なるいびきとは異なり、
「ぐぉー……(静寂)……ぷはっ!」
というように、突然静かになる時間があるのが特徴。
この“静寂”の間こそ、実は無呼吸が起きています。
■ ② 無呼吸(家族から指摘されることが多い)
自分では気づきづらいため、家族・パートナーが気づくことが多い症状です。
・呼吸が止まっている
・急に息を吸って目が覚める
といった特徴的な行動が見られます。
■ ③ 頻回の中途覚醒
トイレに行きたくなったと思っていても、実際は無呼吸による苦しさで脳が覚醒しているだけのケースが多数あります。
■ ④ 寝汗、心拍数の上昇
呼吸停止のたびに身体が“緊急モード”になるため、自律神経が乱れ、汗をかいたり動悸を起こすこともあります。
■ ⑤ 口の渇き、喉の痛み
口呼吸になることで、朝の乾燥や喉の痛みが起こりやすくなります。
3. 主な症状(日中)
“眠れなかった”影響は翌日に・・・
■ ① 日中の強い眠気(最も多い症状)
会議中・運転中・商談中・授業中に眠ってしまう…
これらは単なる疲れではなく、無呼吸による睡眠の質の低下が大きく関係します。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんの多くが、日中の眠気が治療前の最大の困りごとと話されています。
■ ② 集中力の低下・判断力の鈍り
仕事の効率が落ちたり、ミスが増えたりするのも典型的な兆候。
脳が深く休めていないため、認知機能が低下します。
■ ③ 起床時の頭痛
酸素不足が続くことで、血管が拡張して頭痛が起きる場合がよくあります。
■ ④ 倦怠感・疲労感が抜けない
「8時間寝ても疲れが取れない」「常に体が重い」
これは“睡眠の質が極端に低い”ことが原因です。
■ ⑤ イライラ・気分の落ち込み
自律神経の乱れや睡眠不足により、感情が不安定になることも指摘されています。
4. 放置するとどうなる?
症状の“先”にある重大リスク
睡眠時無呼吸症候群は、単なる睡眠の問題ではありません。
国内外の研究では、以下の病気のリスクを大きく高めることがわかっています。
・高血圧症(治療抵抗性高血圧の大きな原因)
・心筋梗塞・脳卒中
・不整脈(特に心房細動)
・糖尿病
・動脈硬化
・交通事故リスクの増加(健常者の約4倍と言われる研究もあり)
・うつ・メンタル不調の悪化
これらはいずれも命に関わる重大な病気です。
しかし、逆にいえば早期に治療すれば上記のリスクを大幅に下げられるということでもあります。
5. 自分で確認できる“症状チェック”
まずは、自己診断用の「ESS問診票」を使って簡単にチェックしてみましょう。
こちらに ESS問診票をご用意しています。正式な問診票ですが、質問は全8項目と少なく、すぐに行うことができます。ぜひ一度お試しください。
ESS問診票とは:日中の眠気の程度を客観的に評価するための一般公開されている簡易的な質問票です。睡眠時無呼吸症候群(SAS)や過眠症など、睡眠に関連する疾患のスクリーニング(一次判定)に用いられます。
— 自宅でできる睡眠検査が主流に —
睡眠時無呼吸症候群の検査は、現在はとても手軽になっています。
以前は病院で一泊の精密検査が中心でしたが、近年は、自宅でできる簡易検査(スクリーニング)が一般的になっており、多くの医療機関でも導入されています。
6. 症状が強い人の“第一選択”がCPAP治療
症状の根本にアプローチする確立した治療
中等症〜重症の睡眠時無呼吸症候群に対して、世界中で“最も効果が高い”とされるのが CPAP(シーパップ)治療 です。
CPAPとは?
睡眠中に気道が塞がらないよう、一定の空気を送り込んで気道を確保する治療法です。
ただし大げさな装置ではなく、医療機器メーカーの技術進歩により、静か・軽い・自動調整(APAP)・清潔管理が簡単といった点が大きく改善されています。
CPAPの効果(患者さんの声で最も多いもの)
・朝の目覚めが圧倒的に良くなる
・日中の眠気がほぼ消える
・頭が冴えて仕事の効率が上がる
・夜間の中途覚醒が減る
・血圧が安定する
・いびきが解消され、家族の睡眠環境も改善
症状の“原因”(気道の閉塞)に直接アプローチするため、効果が非常にわかりやすい治療です。
7. 症状に心当たりがある方へ
一人で悩まないでください。検査と治療で日常は大きく変わる
睡眠時無呼吸症候群は、症状はつらいのに、本人が気づきにくいという特徴を持つ病気です。しかし逆にいえば、気づいて検査を受ければ、改善できる余地が非常に大きい病気でもあります。
・眠気で仕事に集中できない
・健康診断の結果が悪化している
・家族から「呼吸が止まっている」と言われた
・いびきで悩んでいる
・生活の質が下がっている
こういった“何となくの不調”が、実は睡眠時無呼吸症候群によるものだったという例は数多くあります。症状を放置すると健康リスクは高まりますが、逆に、CPAPなどの適切な治療を受けることで、日常生活は劇的に改善します。
特にCPAPは、「治療効果が実感しやすい」「続けるほど体調が良くなる」という点から、多くの患者さんが前向きに取り組める治療です。
私たちは、睡眠時無呼吸症候群で悩む方々が“安心して正しい治療にたどり着けるように”サポートすることを目的としています。
つらい症状がある方は、睡眠検査を検討してみてください。
患者の会からのメッセージ
私たち「睡眠時無呼吸症候群に打ち克つための患者の会」では、同じ悩みを抱える方々が安心して相談できる場所を提供しています。
詳しくは以下をご覧ください。
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